麻とヴェルヴェット
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「シャネルは女性をコルセットから解放した」と言われていますが、
それは神話と考えたほうがよいです。 どういう意味かというと、事実ではないということです。 服飾史を見れば簡単にわかることですが、 20世紀初頭にコルセットをやめたのはポール・ポワレです。 しっかりはっきり書いてあります。 だからこれはみんな知っている。 あとついでに言うと、 コルセットが出てきたのが中世後期とされているけれども、 それ以降、18世紀にもコルセットはなくなっています。 ナポレオンの妻のジョセフィーヌの着ていたドレスは、 エンパイアスタイルドレスといって、胸の下からスカートがはじまっていて、 コルセットなんかしていません。 (キーラ・ナイトレーが出てた「プライドと偏見」を見た人ならわかると思うけれど、あれです) あと、フランス革命のあとも、みんなゆるい格好をしていました。 コルセットはない。 もう1つの正確でない点です。 「コルセットから解放」と言っていること。 解放というからには、それ以前、拘束なり強制なりされていたという前提になりますが、 別にそんなことはありません。 なぜなら、エンパイアスタイルドレスのあと、またみんな、みずからコルセットをつけ始めるから。 女はみずから好んでコルセットをつけていたと、 アメリカの服飾史の先生の本にも書いてありました。 ではなぜこの神話が必要だったのか? たぶんそれはシャネルの製品を売るためでしょうね。 シャネルを神格化する必要があったのでしょう。 そうしないと売れないから。 だって、ウエストがなく寸胴で、膝も見えてはだめで、 安いジャージのドレスがシャネルの本来のスタイルですから。 今のシャネルとは全然違います。 シャネルはクリスチャン・ディオールが ニュールックでウエストをしぼってあらわれたら激怒しているんですから、 ああいうウエストがあって、ぱっと広がるスカートなんていうのは 作る気はない。 でも女は、ウエストを細く見せたいんです。 コルセットもしたいし、 今は コルセットじゃなくて、そこを鍛えて見せたい。 シャネルがコルセットを使うのを最初にやめたわけじゃないのに、 いまだにそういうふうに書いてある。 その裏の意図はなんだろうかと こちらも考えなければいけませんね。 Comments are closed.
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AuthorNaoko Kobayashi Archives
November 2023
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