麻とヴェルヴェット
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私がアパレル会社で働いていたころは、
バブル崩壊の後だったんですけれども、 今に比べればまだまだ全然景気はよくて、 株で儲けた人とかじゃなく、 普通に働いている人の中でもお金がある人がいました。 今でも覚えているのは、 会社に来ていた商社の男性社員の方々で、 見るからにいいスーツを着ていました。 なんだろう、あれは。 生地の輝きとか、その人の肉体以上に立派に見える感じとか、 そういうので、それはいいスーツですよね、とわかるわけです。 (まあ、そんなスーツのおじさんが、 わかばのタイ焼き持ってきて、私に無給残業させようとするから怒ったわけですが、 それはいいとして) あれから20年余り、 会社員の男性のスーツが、あれれ、どうなっちゃったの? というぐらいにひ、ひどいな、ということに先日、気づきました、東京駅で。 まあ、仕事用のスーツになんか、お金をかけられないのでしょう。 でもね、いいスーツを着ると見違えるようになるのです。 なぜなら、スーツというものは、西洋の肉体美を表現しているからなのです。 そりゃあ、毎日、ミケランジェロの彫像を見て生活している国に住んでいる人が作るのは違いますよね。 スーツは筋肉がデザイン化されたものなんです。 しかも理想的な形で。 日本のブランドで、ちょっとここはいいかもと思って、
インスタグラムを見ると、 使っているモデルが全員白人ということが結構あって、 そのたびに、自分の中で「終了」の合図が出ます。 欧米を中心とした雑誌を含むファッション業界では、 多様性は当たり前で、 この前のシーズンだったと思うけれども、シャネルとプラダはトップが黒人モデルでした。 もちろん、アジア系も多く起用されていて、 2010年以降、それは顕著です。 (ちなみに現在、私が好きなアジア系モデルはChu Wongさん) 翻って日本のファッション業界は、 70年代に山口小夜子さんをモデルに起用して以降、 ぽつぽつとしか日本人モデルを起用せず、 ほとんど無視するブランドも多く、 それからもうすぐ50年もたとうとしているのに、 自分たちがアジア人であるにもかかわらず、 いまだ白人モデルだけとは、その遅さ、とんちんかんさ加減にげんなりします。 確かに昨今の有名なアジア系モデルは、 ギャラも高いでしょうから、そうそう使えないでしょうけれどもね。 きのう「「定番」と言われているものもひとつの流行」という文章を読んで、
はっとしました。 そうですよね。 現在の「定番」が、いつまでも「定番」というわけではありませんよね。 その人の「定番」というのはあると思います。 私はこれが好き、これをいつも着るというもの。 だけれども、今の「定番」はずっと定番とは限らないです。 思わぬものが定番になり、 思わぬものが定番でなくなっていきます。 きのうは暑くて、って、日本じゅう暑かったようですが、
暑すぎてブーツがはけません。 しかし天気予報を見ると、週末は最低気温が13度で、 これはもう暖房が必要な寒さ。 で、11月になると一気に寒くなるんでしょ。 季節に文句を言っても仕方ないけれど、 秋って本当に短いのだな、ないのだなと思います。 ところで、先日の台風、うちのほうも海風がくるらしく、 塩害で、植物の葉っぱがびりびりになって枯れました。 秋に向かって出始めてた薔薇の葉っぱもびりびりだし、 シュウメイギクのつぼみも全滅。ダリアもぼろぼろ。 (だけれども、雑草だけは元気・・・) いろいろな意味で秋がなく、寂しいです。 暑いのは湘南エリアだけではないと思いますが、
皆さんの地域はいかがでしょうか。 雨も多いし、梅雨のようですね。 秋の雨季と考えていいのかもしれません。 私も結局、家の中では真夏と同じ装い、 つまり、シルクのキャミソールとアディダスのパンツです。 夏のあいだじゅう、5枚のシルクのキャミソールを洗っては着続けました。 洗濯が簡単、すぐ乾く、涼しいの三拍子そろっています。 出かけるときは、この上にトラックジャケットです。 これでうちの近所と、お買い物はすべてOKでした。 もっと遠くへ出かけるときは、トラックジャケットではなくてデザイン性のあるシャツを着ていました。 2019SSで、デムナが、これからはジャケットはいらないよ、シャツだよ、 みたいなことを言っていましたが、 日本も遅かれ早かれそうなるでしょう。 準ジャケットのようなシャツでのお出かけ着です。 シャツではラフすぎ、ジャケットでは暑いし、堅苦しい。 ですからその中間です。 そういえば、H&Mでウィリアム・モリスの柄のいろいろが売りだされていましたが、 HP見たら、半分以上売り切れていました。 いらないからいいけど。 この時期、多くの人が麻素材のものは秋に着ていいものかどうか、
心配しているようです。 実際、着たければいつでも麻を着ても構わないのですが、 やはり中には真夏向けみたいなものもあって、 それは麻100パーセントで、色も夏の純白で、表面がさらっとしていて、 触れると温かみがない感じの素材のものです。 一方、麻といっても、ウールリネンなど、ウールとの混紡や、 ビスコースリネンなどは今の時期にちょうどいいかと思います。 麻でも多少起毛しているものもあります。 もっと簡単に言えば、 夏という季節をさほど感じさせない混紡の麻なら、 別にいつ着ても構いません。 着物と同じように、
服にもいい素材とか、いい仕立てとか、いいパターン、美しい色合いというものがあって、 それは普遍的でほとんど変わりません。 (絶対ではない。変わるときもある。例えば高級な化学繊維の出現とか) 例えば、仕立てにしても、縫い代の処理をロックミシンでするよりは、 織り伏せとか、パイピングしたほうがいい仕立てだし、 パターンだって、着ていてずり下がってくるものとか、 脚が短く見えるのがいいパターン、ということはありません。 一方、普遍的ではないのはデザインとかシルエット。 それは流行によって左右されるので、一概にいいデザインとか、いいシルエット ということは言えません。 で、ファッションはそれについて扱う分野。 この2つのポイントに、それぞれの好みや志向性が付け足されて、 最終的に何を選ぶかが決定されます。 流行は常にあって、その時代にはそのときの流行のものしか買えないので、 逃れることはできません。自分で作る以外には。 流行は情報として消費され、やがて忘れ去られます。 それはニュースのようなもの。 だけれども、普遍的なものは忘れられない。 私がより興味があるのはそちらのこと。 普遍的なものとか、忘れられないとはどういうことか、 そちらに興味があるので、それについて考えています。 コレクションで発表されるものの中にどれだけ普遍性を持っているものがあるか、 そしてどのようなものが忘れ去られるものなのか、 それを見極めるようにしている。 忘れ去られるものはどういうものかというと、 そのデザインなりシルエットが、普遍を目指していなく、 単なる自己主張にすぎないものです。 これらは、それがいまどれだけ評価が高かったとしても、 必ずや、忘れ去られます。 スージー・メンケスとは、現在74歳のヴォーグの専属ライターで、
パリのサンディカという名門のクチュール組合に所属している学校を出た後、 ケンブリッジで歴史学の修士もとっていて、 各新聞社で長年にわたりファッション関連の記事を書いてきて、 その功績をたたえられ大英帝国勲章とかもらっている面白い髪型の方です。 前置きが長くなりましたが、 そのスージーのインスタ、面白いのでずっとさかのぼって見てみました。 見ればわかるけど、 スージー、同じ服の割合がすごく多い。 首からぶら下げているハートの形のペンダントも同じ。 もちろんコートも同じ。 柄物のドレスも同じ。 いつも同じプリーツプリーズのプリーツの上着。 スージーは作り方もデザインも歴史もわかっていて、 何年もコレクションを取材して、記事を書いていて、 それで至ったのが、 自分が好きな服をいつも着る、それがいつも同じであったとしても、 です。 しごくまっとう、かつ本物。 こういう人を見習えばいいし、目指せばいいのです。 そしてお知らせです。 昨日より11月3日の「東京ハ―ピー」の募集開始いたしました! 今年は、異文化の取り入れ、というテーマで、 日本という異文化を西洋の衣服はどうやって取り入れてきたか、 では、私たちは今どうするのがいいのか?みたいなことについて私はしゃべる予定です。 ルイ・ヴィトンの歌舞伎バッグや、ア―デムの北斎プリントなど、 異文化日本テイストは記憶に新しいところです。 また、アベユリコさんには今回、特に東京の昭和の家と庭の部分に力を入れて解説していただく予定です。 皆様ぜひご参加ください。 それから、10月20日(土)のファッションレッスン中級は残席1です。こちらもお早目にどうぞ。 今年も龍子記念館における絵画鑑賞会「東京ハ―ピー」を開催いたします。
(今年から「東京ハッピー」改め「東京ハ―ピー」にいたしました。 龍子発行の雑誌より題名をお借りしています。意味は不明です!) 今回で4回目になる川端龍子絵画鑑賞会。 現在、龍子記念館において「異国の情景 アジアへの熱情」をテーマに 展覧会が開催されております。 その展示鑑賞の前に、小林と龍子直系の曾孫に当たるアベユリコさん、2人で 作品の解説をいたします。 特に今年は「異文化の取り入れ」をテーマにファッションについても語る予定でおります。 また、龍子記念館においては、いつも急いでの解説になってしまう龍子のアトリエと庭により重点を置いて解説する予定です。 毎年、いいお天気になる11月3日文化の日、日本文化を鑑賞いたしましょう! 日時:2018年11月3日(祝日・土) 時間:13:00~16:00 場所:大田区立龍子記念館、その他 定員:20名 参加費:2000円 主催:小林直子 参加ご希望の方は、 ・お名前(本名) ・参加人数をご記入の上、 メールの件名「東京ハ―ピー」として、 fateshowthyforce@gmail.com 小林までご連絡ください。 よろしくお願いいたします! |
AuthorNaoko Kobayashi Archives
March 2024
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