麻とヴェルヴェット
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くじら館の「ご自由にお持ちください」本のコーナーに、
草笛光子さんのスタイルブックがありました。 なんでも今、人気なんだそうです。 ぱらぱらめくってみましたが、女優らしい素敵なルックがたくさん出ていました。 最近また、50歳になったら何を着ていいかわからないという声をよく聞くようになりました。 私は最初、お金の問題だと思ったので、お金がなくても、ファストファッションを買わなくてもなんとかなるという方法を提示しました。 だけれども、それでも何を着ていいかわからないと言う人がいます。 そういう人が、じゃあ例えば草笛光子さんのスタイルがいいと思って、 そのまま草笛さんのスタイルを真似するかといったら、 しないですよね。 なぜか。 なぜなら、その人は女優じゃないからです。 草笛さんは女優アイデンティティが確立しているのであのスタイルです。 ほとんどの人は女優ではないので、あのスタイルにはなりません。 もう随分前、53歳ぐらいの女性で、 「服が売っていない」とおっしゃっていた方がいました。 言った言葉を真に受けて、いやいや売っていますよとお答えしましたが、 あれは真に受けてはいけなかった。 その方が言ってたのは、離婚している、子供はもう家にはいない、 パート勤め、ということでした。 私の本で最初にキャラクターを設定するように書いています。 この方の場合、53歳、離婚歴あり独身でひとり住まい、パート勤め、となります。 たぶんだけれども、この方はこの自分のキャラクター設定が嫌なんでしょう。 このキャラクターと自分自身を一致させたくない。 でもかといって、何かほかにどうしたいというキャラクターがあるわけでもない。 例えば、誰かの恋人だったら、「着る服は売っている」になると思います。 (江ノ島を歩く熟年カップルはみんな楽しそうです!) 現実の自分が嫌だけれども、望みの自分もない。 社会的アイデンティティがクライシスに陥った今、 この社会において、何を着ていいのかわからなくなった。 こんな感じだと思います。 そんなときは、 「好きなものを自由に着ていいのよ」と言われても、 どうすることもできないのでしょう。 ではどうしたらいいかについては、 おいおい考えましょう。 Comments are closed.
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AuthorNaoko Kobayashi Archives
September 2023
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